2021年2月4日、家電量販店大手のヤマダ電機が株主優待の改悪を発表しました。
ヤマダ電機は株価によっては5〜6万円から投資ができるため、株主優待入門として広く知られている銘柄です。
また優待利回りも高水準であることから、多くの個人投資家が保有しています。
今回の改悪は最低単元を保有する多くの個人投資家には大打撃です。
本ページではヤマダ電機の株主優待改悪の内容と、改悪理由を推測してみます。
ヤマダ電機の株主優待が改悪
ヤマダ電機は2021年2月4日に優待内容の改悪を発表しました。
改悪の内容は大きく
- 500株未満の優待特典が減少
- 継続保有株主優遇制度の廃止
の2つです。
500株未満の優待特典が減少
100株〜499株の保有特典が減少しました。
【変更前】
100株〜 | 年間3,000円相当 (3月:1,000円、9月:2,000円) |
500株〜 | 年間5,000円相当 (3月:2,000円、9月:3,000円) |
1,000株〜 | 年間10,000円相当 (3月:5,000円、9月:5,000円) |
10,000株〜 | 年間50,000円相当 (3月:25,000円、9月:25,000円) |
【変更後】
100株〜 | 年間1,500円相当 (3月:500円、9月:1,000円) |
500株〜 | 年間5,000円相当 (3月:2,000円、9月:3,000円) |
1,000株〜 | 年間10,000円相当 (3月:5,000円、9月:5,000円) |
10,000株〜 | 年間50,000円相当 (3月:25,000円、9月:25,000円) |
減少するのは500株未満保有のみで、「年間3,000円」貰えていた優待が「年間1,500円」になります。半減です。
500株以上保有している場合には優待内容に変わりありません。
継続保有株主優遇制度の廃止
ヤマダ電機では株の保有期間によって優待が優遇される「継続保有株主優遇制度」を導入していました。
100株〜 | 1年以上:年間2,000円相当 (3月:1,500円、9月:500円) 2年以上:年間2,500円相当 (3月:2,000円、9月:500円) |
100株以上から恩恵があったこの特典ですが、廃止となりました。
長期ホルダーにとっては痛手となる改悪です。
改悪前と改悪後の優待利回りは?
上記2つの改悪により、優待利回りが減少します。
とくに100株〜499株保有者は2つの改悪が直撃するため、最大で「年間5,500円」貰えていた優待が「年間1,500円」と約70%減です。
改悪前と改悪後の優待利回りは次の通りです。
※株価は550円、2年保有していた場合の優待利回り
保有数 | 変更前 | 変更後 |
100株 | 10.00% | 2.73% |
500株 | 2.73% | 1.82% |
1,000株 | 2.27% | 1.82% |
10,000株 | 0.95% | 0.91% |
100株保有者はダブルの改悪により利回りが激減しています。
また長期保有特典が無くなったことにより、全ての保有株数で利回りが減ることになります。
優待を改悪した理由
ヤマダの株主優待は長年優待内容が維持されていましたが、なぜこのタイミングでの優待内容改悪を発表したのか、個人的な推測になりますが3つの理由が考えられます。
理由1:異常な利回り
まず1つ目の理由として、異常な優待利回りが挙げられます。
改悪前の100株保有時の最大優待利回りは10%超と、ビックカメラ(最大利回り約5%)などの同業他社に比べても異常な水準です。
10年前くらいの株価1,000円以上だったら適当な水準だったかもしれませんが、ここ数年の株価の値下がりに応じて段々と優待利回りが暴騰していました。
理由2:業績が好調
2つ目の理由に、直近何回かの四半期決算が好調だったことが考えられます。
好調だった理由としては「巣篭もり需要」や「特定給付金の配布」があります。
つまり「ヤマダ電機の地力・魅力で売り上げが好調なわけでは無い」とも言えます。
株価が下落基調にあるヤマダ電機が「偶然出来た好調な業績」を盾に、優待改悪に踏み切った可能性は否めません。
「業績好調」と「優待改悪」を相殺、といった感じですね。
特需が終われば売上が落ちる可能性が高いのを1番理解しているのは経営者です。
ヤマダから見れば「今が好機!」というタイミングだったかもしれませんね。
理由3:東証の構成変更
3つ目の理由はヤマダ電機だけではなく全ての上場企業に関係することですが、2022年4月(予定)に
- 東証一部
- 東証二部
- JASDAQ
- マザーズ
の市場が
- プライム
- スタンダード
- グロース
の3つに再編される予定です。
参考:市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(PDF)
この再編に伴い、上場基準の見直しが行われます。
「株主数」も見直しされる項目の1つで、現在東証一部に上場するには「2,200人以上」の株主が必要ですが、新市場で東証一部に該当する「プライム」では「800人以上」と緩和されます。
そのため「株主優待を餌に個人株主を集めなくてもいい」というわけです。
今回のヤマダの改悪はこれが直接的な理由である可能性は低そうですが、世界的に珍しい制度である「株主優待」という考え方が見直される段階にあるのかもしれません。
これからも保有するべきか
最後に改悪後もヤマダ電機株を保有しておくべきか否かですが、
- ヤマダ電機が好きで応援したい
- ヤマダ電機の優待を苦もなく利用している
のような人はそのまま保有しておいてもいいのかな、と思います。
それ以外の人は優待利回りは標準ラインまで低下しましたし、そもそも1,000円で1枚利用できる使い勝手が悪い優待のため「無理して保有しなくても良いのかな」というのが率直な感想です。
個人的にはソーダストリームを愛用しているため、定期的にヤマダ電機で買い物をします。なのでしばらくは保有していてもいいかな…と考えています。
おわりに
100株保有者は大打撃の改悪内容で、標準的な優待利回りになってしまったヤマダ電機。
これを機に「1,000円ごとに1枚500円割引」という制限が廃止されると良かったのですが…これは維持されるようです。残念。
私はヤマダ電機で定期的に買い物をするのでしばらく保有しますが、「ヤマダ電機で無理やり優待を消費している人」や「特にヤマダ電機に思い入れの無い人」は手放してもいいのかな思います。
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